健康寿命を延ばすための提言はエビデンスに基づいたさすがの提言だった

和食

2021年2月18日、国立がん研究センターや、国立循環器病センターなど国立6機関により、疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のためのの提言が発表されました。

これらは、複数の国の機関が、エビデンスに基づいて、健康寿命を延ばすために必要な行動についてまとめたものですから、自身の健康を考えるうえでの重要なバイブルになるに違いありません。

今回は、この健康寿命を延ばすための提言、特に食事項目について私なりの解釈となりますが、解説してみたいと思います。

幸福度の判断項目の1位は健康であること

第一生命保険の「どんな人が幸せなのか」というレポートによると、幸せの判断項目の1位は健康です。

レポートでは、若い世代においては、経済的なものであったり、家族であったりが健康を上回り、幸せの項目上位になっていますが、60代以降は、健康を幸せの基準と考える方が多いことがレポートからわかります。

特に一度でも大きな病気を経験した方なら、健康の尊さを十分に意識されるのではないでしょうか。

健康寿命と平均寿命の違い

日本人は大変な長寿で、世界の平均寿命ランキングでは男性で81.1歳で2位。女性は87.1歳で1位です。男女のトータルでは世界一の長寿であります。

一方で、平均寿命に対して、健康寿命という言葉があります。平均寿命が単純に生きた期間を指すのに対して、健康寿命とは、自立して生活できる期間のことで、まさに健康で生きられた期間のことを指します。

日本人は平均寿命と健康寿命の差が大きく、平均寿命と比べて男性で約-9年、女性では約-12年もの差があり、課題です。生き生きと健康で自立して過ごせる期間を延ばすための提言が、今回の健康寿命延伸のための提言です。

健康寿命を延ばすための提言とその要因

幸せイメージ
健康とは心身ともに健康である状態をいいます

健康寿命を延ばすための提言では下記の要因、項目について記載しています。それぞれについて、私なりの解釈で申し訳ありませんが、簡単に解説します。

1.喫煙・受動喫煙

たばこは吸わない、そして他人が吸ったたばこについても、受動喫煙といいますが、これは他人同様に避けるということが記載されています。喫煙については、「吸ってよいことはひとつもない」ことが多くの研究結果から証明されています。

また最近流行りの加熱式たばこについても避けることが提言されています。

2.飲酒

適度な飲酒は、体によいということも言われますが、過度の飲酒は、様々な疾病リスクにつながるとしています。また、今回、お酒を飲めない人にお酒を強要しないと書かれている点が目を引きました。

3.食事

栄養バランスよく食事を摂取することは当然提言されていますが、エビデンスに基づいてより具体的に踏み込んで提言されています。非常にボリュームがあり、注目に値すべき内容でした。

食事は健康寿命を延ばすために大きな要因となりえます。食事についての提言内容については、後ほど詳しく記述いたします。

4.体格

やせすぎない、太りすぎない。と書かれています。健康の勉強をしてきた人ならピンとくることがあるかもしれません。今までは、肥満について、多くの大きな病気の原因となりうることが警鐘されてきましたが、今回の提言では、痩せすぎもよくないという点が記述されています。

特に高齢者の方は、痩せすぎによる健康リスクについて注意する必要がある点が、記述されたと思います。

5.身体活動

1日10分でも身体活動を多くすることを提言しています。これは厚生労働省も提言されていますが、1日10分増やすという事は、歩行にして1日1000歩増やしましょうということです。

仕事や家事に忙しい世代はなかなか運動をする機会がありません。日常生活の中で工夫して身体活動量を増やす努力をしたいものです。

6.心理社会的要因

心理社会的ストレスを避けることを提言されています。WHOによると健康の定義は、「身体的にも精神的にも、そして社会的にも健全である」状態をいいます。

ストレス社会である現在、身体的な健康はもちろんですが、精神的、社会的に病んでしまっている方も非常に多いです。現在社会において大きな課題ではないでしょうか?

加えて、質のよい睡眠を心がけるよう提言されています。

7.感染症

コロナ禍で今、感染症について、大きな注目が集まっていますが、肝炎ウイルスやピロリ菌についてのリスクについて提言されています。また、高齢者においてはインフルエンザなど、ワクチン接種により予防が期待できると明記されています。

8.健診・検診の受診と口腔ケア

定期的な健診・検診を受診すること等が提言されています。検診を定期的に受けることは、予防医学の観点からものすごく重要です。

またがん検診についても科学的根拠に基づいた検診を受けることを提言されています。日本の医療は、科学的根拠いわゆるエビデンスに基づいたしっかりしたものですから、溢れる情報に惑わされないようにしたいものです。

9.成育歴・育児歴

出産後初期は、なるべく母乳で育てることで、乳児はもとより、母体にも健康リスクの軽減があるそうです。その他、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群による将来の疾病リスクについても記載されています。

S章.健康の社会的決定要因

健康リスクは、経済的、または居住地、成育環境に影響を受けて、差が出ることがわかっています。健康格差ともいいますが、この点を改めて記述されているように思います。

健康寿命を延ばすための食事について

食事バランス
食事からバランスよく栄養を摂ることが大事

私は常日頃から、健康のために必要な要素を、食生活と身体活動、そして自律神経の安定ということを申し上げてきました。健康寿命延伸のための提言でも、この点がしっかりと記載があり、注目して拝見しました。

また、今回の提言は非常に私たちにも読みやすく、また多くのコホート研究やメタ解析の結果を交えて書かれているので、ものすごくいいなというのが私の感想です。

では、私が最も注目する食事について、これより詳しくみていきたいと思います。

健康寿命を延ばすための食事についての提言を詳しく見る

食塩の摂取量を制限する

高血圧と食塩の摂取量の因果関係はないという説を唱えていらっしゃる方もいるとは存じていますが、食塩の摂取量と高血圧もしくは大きな疾病との因果関係があるというのが、エビデンスから導き出された今の定説です。

提言では1日の食塩の摂取量を男性で7.5g未満、女性で6.5g未満を目標にすることが記載されています。日本は昔から調味料などに塩分を多く使う民族ですからなかなか塩分摂取量を減らすことが難しいのですが、WHOの目標基準が1日5gであることを考えると、食塩摂取は可能な限り控えめにするべきです。

野菜、果物を適切に摂取し、食物繊維を多く摂る

厚生労働省の「健康日本21」では、野菜は1日350g、果物は1日200gの摂取目標をあげており、そのことがここでも記載されています。

野菜には、ビタミンやミネラルが豊富に含まれていますが、食物繊維も豊富です。食物繊維は、皆さん意識して摂取している栄養素だと思いますが、まだまだ足りていないのが現状です。

食物繊維は、小腸でコレステロールを吸収したり、糖分の吸収を緩やかにする役割や、便の嵩を増して便をスムーズに出す便秘解消にも役立ちます。

多くのコホート研究でも、食物繊維の摂取量が多いほど疾病リスクが下がることも提言では詳しく書かれています。

大豆製品を多く摂取する

大豆製品についても、特に発酵食品において、多く摂る事で疾病リスクを下げることができます。野菜を多く摂る方法を前回解説していますが、味噌汁に野菜の具をたっぷり入れると、野菜と大豆の両方を摂取できます。

また特に女性は大豆製品を積極的に摂ることが推奨されていて、脂質異常症のリスク低減や様々な疾病リスクを軽減することがわかっています。

大豆イソフラボンは女性ホルモンに似た役割を果たすこともあり、女性が大豆製品を摂取するメリットについて記載があります。

また、私は詳しくは存じませんでしたが、海外では、体外受精治療中の女性を対象としたイソフラボンサプリメントのランダム研究において、妊娠率の上昇が報告されているようですが、サプリメントによるイソフラボンについては、摂取制限があることが記載されていることも忘れず追記しておきます。

(イソフラボンは、きな粉から摂取するのがおすすめです。イソフラボンについては下記の記事を参考にしてみてください。)

>>黒豆きな粉はイソフラボンを効率よく摂取できるベストチョイス

魚を多く摂取する

魚はDHAやEPAといった良質の脂肪酸、不飽和脂肪酸が豊富に含まれているため、健康のために欠かせない食品であるとされています。

脂肪酸には、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸がありますが、そのうち、不飽和脂肪酸はLDLコレステロールを下げるといわれています。

日本の和食は、2013年にユネスコ無形文化遺産として登録されたことをご存じでしょうか?日本の和食が非常にヘルシーフードとして脚光を浴びたわけですが、日本人は昔から主菜を魚中心としてきました。

他にも、高血圧によいといわれるDASH食でも魚は推奨される食品ですし、魚を日常的によく食べる地中海料理もまた、健康に良いと注目をされています。

赤肉・加工肉の摂取を控える

赤肉とは、牛肉、豚肉、羊肉のことを指します。鶏肉は指しません。赤肉や加工肉を多く食べ過ぎることで疾病リスクが上がる事は、多くのコホート研究によって立証されています。

しかし疾病リスクが上がる量というのは、1週間に500g以上ということですから、そこまで食べていないのであれば、それほど気にすることもありません。

むしろ、お肉は良質のたんぱく質ですから、多すぎず適度に採り入れるのがよいということになります。

甘味料を控える

甘未飲料を多く飲む人は飲まない人に比べて疾病リスクが大きいことが記載されています。その代表的な疾病は、糖尿病です。

500mlのペットボトルのジュースにどのくらいの砂糖が入っているか、ご存じでしょうか?約10%と言われています。500mlだと約50gの砂糖が入っている計算になります。角砂糖にすると10gの砂糖が5個ということですね。

私たちはこうして実は知らず知らずに糖分過多になっているケースがあります。疲れた時などの糖分補給は大切なこともありますが、どのくらい糖分が含まれているか、過多ではないか、よく知ることが大切ですね。

脂質、たんぱく質を年齢に応じて摂取する

脂質

飽和脂肪酸の摂取を控えることは、動脈硬化などの疾病リスクを下げることに有効と記述されています。

上述したとおり油には、不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸がありますが、飽和脂肪酸は、LDLコレステロール値を上げる脂肪酸で、これを不飽和脂肪酸に置き換えることで、脂質異常などのリスクが軽減することがメタ解析からもわかっています。

飽食の現在、飽和脂肪酸が多い肉類の摂取が多くなってから、日本の生活習慣病は顕在化してきたという経緯がありますから、昔ながらの魚を主菜とした食事を積極的に採り入れるなど、食事を見直すことは大切なことかと思います。

たんぱく質

一方で、たんぱく質への関心が今、注目されてきている中、植物性たんぱく質の摂取割合が多いほど、死亡リスクが低くなることが提言に記載されています。

欧米の方が、たんぱく質をお肉中心で摂取してきたのに対して、日本人は昔から大豆でたんぱく質を補ってきたという歴史もあります。豆腐などの大豆製品は今やアメリカでもヘルシーフードとして知られていますが、動物性たんぱく質を植物性たんぱく質に置き換えることで、疾病のリスクが下がったというコホート研究結果があります。

動物性たんぱく質は、良質なたんぱく源ですからこれを否定できませんが、動物性たんぱく質だけに偏ることなく、大豆などの植物性たんぱく質も積極的に摂ることは大切なことです。

健康寿命の延伸のための提言は、メタ解析とコホート研究の多くを引用

さて、健康情報はインターネットにあふれるほど転がっています。ただし、インターネット上の情報は、残念なことに、多くはエビデンスに欠ける内容です。

テレビで話題になる健康知識はどうでしょうか?昔はエビデンスに乏しい情報が多く間違った情報も発信されていましたが、大きな批判を浴びたこともあり、今はさすがに間違った情報は少ないと思います。しかしそれでも、偏った情報も多いなという印象です。

今回の健康寿命延伸のためのの提言については、メタ解析とコホート研究によるエビデンスを多く引用されています

メタ解析やコホート研究の詳しい説明についてはここでは割愛しますが、長期間、複数の研究を重ねて分析した結果ですから、現状これほど信頼があるものはありません。

私も健康の勉強を重ねていますが、皆様に正しい情報をお伝えできているかは正直自信がありません。できる限り、こうした正しい情報を参考に、皆様へは情報をお伝えできればいいなと思っております。

健康寿命を延ばすために、はじめよう健康習慣

いかがでしたでしょうか?今回は、健康寿命延伸のための提言について解説しました。あくまで提言を読んで、私なりの解釈を書いていますので、その点ご了承ください。

でも情報過多の時代、こうしたエビデンスに基づいた正しい提言が発表されるのは、私たちにとっても迷うことなく信頼できる情報ですので、ありがたいですね。

参考、引用資料: